【1級技能士が解説】射出成形のソリ|反る方向で原因特定

射出成形のソリ(反り)の原因と対策を解説するアイキャッチ画像。反った方向から原因を特定する考え方を1級技能士が紹介。 不良対策

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成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。

1級技能士のゆーじです。

今回は「ソリ(反り)」についてお話しします。

ソリは、勘や経験だけで直そうとすると迷路にはまりやすい不良です。

ですが、反った方向をよく見ると、原因を絞り込むヒントになります。

反った方向には、必ず理由があります。

今日はその考え方を整理してお伝えします。

ソリ(反り)とは?

ソリとは、成形品が設計形状から変形してしまう現象です。

寸法不良や、他部品との組付不良の原因になります。

特に、平らな形状の箱物や、ガラス繊維(GF)入りの樹脂で発生しやすい不良です。

現場では「変形」や「曲がり」と呼ばれることもありますが、本記事ではこれらを含めて「ソリ」として解説します。

ソリが発生する本当の原因

ソリの原因は、一言で言うと「収縮差」です。

樹脂は冷えて固まるときに収縮しますが、この収縮の量が製品内で均一でないと、変形する力が生まれます。

この収縮差がどこで起きているかを考えることが、ソリ対策の出発点になります。

収縮差が発生する5つの要因

①肉厚差

肉厚が厚い部分ほど、収縮量が大きくなります。

製品内で肉厚に差があると、厚肉側と薄肉側で収縮差が生まれ、ソリの原因になります。

②冷却差

冷えやすい部分と冷えにくい部分があると、収縮のタイミングと量にズレが生じます。

冷却回路の配置や、金型の熱の伝わり方によって発生します。

③保圧不足

保圧が足りないと、ゲートから遠い末端側の密度が低くなります。

密度の低い部分は収縮量が大きくなるため、ソリにつながります。

④型温差

固定側(スプルー側)と可動側(突き出し側)で型温に差があると、それぞれの面で収縮差が発生します。

⑤繊維配向

ガラス繊維(GF)入りの樹脂特有の要因です。

繊維が流動方向に並ぶことで、流動方向とそれに垂直な方向で収縮率が変わり、ソリが発生しやすくなります。

具体的には、GF材は流動方向の収縮率が小さく、流動直角方向の収縮率が大きくなる傾向があります。

この収縮率の違いによって、GF材特有の反りが発生します。

反る方向から原因を推定する

ここがこの記事で一番伝えたい部分です。

反った方向を見ることで、原因をある程度絞り込むことができます。

あくまで一般的なセオリーとしての傾向なので、実際には製品形状やゲート位置によって変わる点はご了承ください。

症状 疑う原因
ゲート側へ反る ゲート反対側の収縮が大きい可能性(保圧不足など)
ゲート反対側へ反る ゲート側と末端側の収縮バランス異常(過保圧など)
固定側へ反る 固定側の型温が高い
可動側へ反る 可動側の型温が高い
流動方向へ反る 繊維配向(GF材)

この表は「絶対にこの原因」というものではなく、原因を絞り込むための最初の仮説として使ってください。

反った方向を確認したら、次に該当する条件(保圧・型温など)を実際に調整して、変化を見ながら原因を特定していきます。

ソリは複数の要因が重なって発生することも多く、実際の現場では原因が1つだけとは限りません。

特に型温差によるソリは、固定側と可動側のどちらへ反るかを見ることで、原因の切り分けがしやすくなります。

ソリ対策の優先順位

原因の仮説を立てたら、次の順番で確認・調整していきます。

①型温バランスの確認

②冷却バランスの確認

③保圧の調整

④ゲート位置の確認

⑤製品設計の見直し

型温・保圧の基本的な考え方は型温の記事保圧の記事で解説しています。

条件を触る順番の全体像は条件出しの順番の記事でまとめています。

①〜④は成形条件で対応できますが、それでも改善しない場合は、リブ設計や肉厚バランスなど、製品設計そのものの見直しが必要になることもあります。

現場でありがちな失敗

ソリが出ると、保圧を上げ続けて対応しようとするケースがあります。

ある程度までは改善することもありますが、上げすぎるとバリや離型不良を招くことがあります。

型温を下げて対応しようとするケースもあります。

ソリは収まっても、今度は寸法のバラつきが増えてしまうことがあります。

冷却時間だけをひたすら伸ばして対応しようとするケースもあります。

冷却時間を伸ばすことで改善する場合もありますが、根本原因(型温差・保圧不足など)を見ないまま伸ばし続けると、サイクルタイムだけが悪化してしまいます。

特に板物やPOMのような結晶性樹脂では、冷却不足がそのままソリにつながることがあります。

成形条件だけがソリの原因とは限らない

ここまでは、成形直後に発生するソリについての話でした。

ただ現場では、成形機から取り出した時点では問題なくても、その後の保管や梱包によってソリが発生することがあります。

「昨日までは良かったのに、今日になったら全部反っていた」というようなケースです。

  • 熱い状態で積み重ねて保管した
  • 箱の中で片側に荷重がかかっていた
  • 長期間の保管で残留応力が解放された
  • 夏場の高温環境で変形した

特に薄肉の板物や長尺製品では、成形条件だけでなく、保管方法や梱包方法も確認する必要があります。

パレットの一番下だけ変形していたり、段ボールの中で立て掛けて保管していたことが原因だったというケースもあります。

特に結晶性樹脂(POM・PA・PBTなど)では、成形後もしばらく収縮が進むことがあります。

そのため、成形直後の寸法だけでなく、24時間後の寸法確認を要求されるケースもあります。

成形条件をひと通り触っても改善しない場合は、原因が成形条件ではなく、保管・梱包・残留応力による「後収縮」である可能性も視野に入れてみてください。

私が現場で最初に確認すること

私はソリが発生したとき、まず「どちら側に反っているか」を確認します。

反った方向を確認したうえで、先ほどの表を仮説として、該当しそうな条件から確認していきます。

以前、POM樹脂の板物(平らな板状)の製品で、ソリに苦労したことがあります。

反りが大きく、相手部品と嵌合できない状態でした。

そのときは冷却時間を見直すことで対応しました。

もともと30秒だった冷却時間を60秒まで延ばしたところ、ソリが収まり、良品が安定して取れるようになりました。

サイクルタイムは伸びてしまいましたが、嵌合できない不良品を作り続けるよりは、確実に良品を取れる条件を優先しました。

板物のような平らな形状は、そもそも反りやすい形状です。

冷却が不十分な状態で取り出すと、金型から出た後の収縮でさらに反りが進むことがあるので、冷却時間には余裕を持たせることを意識しています。

ソリ対策ができた状態とは

ソリ対策ができた状態とは、以下の3つを満たしている状態です。

  • 反りが公差範囲内に収まっている
  • 相手部品との組付・嵌合に問題がない
  • ショットごとの反り量のバラつきが小さい

ソリ対策チェックリスト

  • 反っている方向を確認したか
  • 肉厚差がないか製品図面を確認したか
  • 固定側・可動側の型温差を確認したか
  • 保圧が不足・過剰になっていないか確認したか
  • GF材の場合、流動方向と反り方向の関係を確認したか
  • 冷却時間が形状に対して十分か確認したか
  • 成形条件で改善しない場合、製品設計側の要因も検討したか
  • 成形直後は問題なくても、保管・梱包後に反りが出ていないか確認したか
  • 結晶性樹脂の場合、24時間後などの寸法変化を確認したか

よくある質問

ソリが出たら、まず何を確認すればいいですか?

まず、製品がどちら側に反っているかを確認してください。反った方向によって疑うべき原因がある程度絞り込めるので、闇雲に条件を変えるより効率的に対策できます。

保圧を上げればソリは直りますか?

保圧不足が原因のソリであれば改善することがあります。ただし上げすぎるとバリや離型不良の原因になるため、反った方向から保圧不足の可能性を確認したうえで調整することをおすすめします。

GF材(ガラス繊維入り)はソリが出やすいのはなぜですか?

ガラス繊維が流動方向に並びやすく、流動方向とそれに垂直な方向で収縮率が変わるためです。通常の樹脂とは異なる視点で、繊維配向を意識した対策が必要になります。

冷却時間を延ばせばソリは必ず改善しますか?

改善する場合もありますが、原因が型温差や繊維配向である場合は効果が小さいことがあります。まずは反る方向を確認し、収縮差がどこで発生しているかを考えることが重要です。

成形直後は問題なかったのに、翌日反っているのはなぜですか?

成形条件ではなく、保管・梱包・残留応力による「後収縮」が原因の可能性があります。特に結晶性樹脂では成形後もしばらく収縮が進むことがあるため、保管状態や積載方法もあわせて確認してみてください。

まとめ

ソリの原因は、突き詰めると「収縮差」です。

肉厚差・冷却差・保圧不足・型温差・繊維配向、この5つのどこかに収縮差が生まれています。

反った方向を確認することで、原因の仮説を立てやすくなり、闇雲に条件を変える遠回りを避けられます。

成形条件で改善しない場合は、製品設計側の要因も視野に入れて検討してみてください。

反った方向には、必ず理由がある

ソリ対策で大切なのは、闇雲に条件を触ることではありません。

反った方向を観察し、どこで収縮差が発生しているのかを考えることです。

勘ではなく、物理現象で考える。

それが遠回りに見えて、一番早く原因にたどり着く方法だと私は考えています。

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