【1級技能士が解説】新人が最初に覚える樹脂10選

射出成形で新人が最初に覚える樹脂10種類を1級技能士が解説 射出成形

📋 この記事でわかること

  • 新人オペレーターが最初に覚えておきたい樹脂10種類の特徴
  • 樹脂ごとの成形温度・乾燥条件の目安
  • 結晶性・非晶性の違いと、現場でつまずきやすいポイント

⚠️ 免責事項
本記事の温度・条件はあくまで一般的な目安です。実際の成形条件は、必ず使用する材料メーカーのデータシート・グレード仕様を優先してください。内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

1級技能士のゆーじです。前回、新人が最初に覚える10項目という記事を書きましたが、今回はその続編として「樹脂」にフォーカスします。

成形条件は樹脂によって大きく変わります。
同じ「樹脂温度を上げる」でも、樹脂が違えば意味も危険度も変わってきます。
まずは樹脂ごとの性格を知ることが、条件出しの土台になります。

本記事の「樹脂温度」は、一般的な成形条件の目安として記載しています。
成形機の設定温度と実際の溶融樹脂温度は一致しない場合があるため、数値はあくまで参考値としてご覧ください。

なお本記事で扱う10樹脂のうち、PP・PE・PS・ABS・PC・POM・PA6の7種類は、私自身が実際に成形を担当した経験に基づいて書いています。
一方でPMMA・PBT・PPSの3種類は、業界で一般的に知られている特性・目安条件を基にまとめたもので、私自身の直接の成形経験ではありません。

この点は区別して読んでいただければと思います。

樹脂10種類 比較表|成形温度・乾燥条件の目安

乾燥条件は材料メーカー・グレードによって異なるため、実際に使用する際は必ずデータシートを確認してください。

樹脂名 分類 樹脂温度目安 乾燥条件目安
PP 結晶性 180〜240℃ 不要
PE 結晶性 160〜200℃ 不要
PS 非晶性 190〜240℃ 不要
ABS 非晶性 200〜250℃ 80℃・2時間
PC 非晶性 280〜320℃ 120℃・3時間
POM 結晶性 190〜210℃ 80℃・2時間
PA6 結晶性 240〜280℃ 90℃・5時間
PMMA 非晶性 180〜260℃ 80℃前後・3〜4時間
PBT 結晶性 230〜270℃ 120〜140℃・3〜4時間
PPS 結晶性 300〜330℃ 140〜150℃・3時間

※この表はあくまで目安であり、絶対的な基準ではありません。
グレードやメーカーによって推奨条件は異なるため、必ず使用材料のデータシートを確認してください。

実際に成形を担当した経験がある7樹脂

成形温度・乾燥条件の数値は冒頭の比較表をご参照ください。
ここでは、それぞれの樹脂で私が現場で感じたこと・つまずいたポイントをまとめます。

樹脂名 現場での経験・注意点
1. PP
ポリプロピレン
乾燥が基本的に不要で扱いやすい樹脂です。私の場合、樹脂温度が高すぎたときに先端の糸引きが止まらなくなった経験があります(ドローリング→シルバーや金型挟み込みにつながることも)。サックバックの調整や先端温度を少し下げること、糸引き防止リングの活用で改善しました。
2. PE
ポリエチレン
PPと同様に乾燥不要ですが、樹脂温度はPPよりやや低めです。低すぎるとゲート詰まりが起きやすいのは、他の樹脂とも共通する感覚です。
3. PS
ポリスチレン
こちらも乾燥は基本的に不要です。汎用樹脂の中では、比較的扱いやすい部類だと感じています。
4. ABS 温度が上がりすぎると熱分解のリスクが高まるとされているため、上限を意識した温度管理が必要です。私の場合、板物・3点ピンゲートの成形でウェルド部にボイドが発生した経験があります。原因は樹脂がぶつかる際の速度過多で、多段設定でその部分の速度を落として解消しました。PC・PPと同様、温度が高すぎると糸引きが出やすい樹脂でもあります。
5. PC
ポリカーボネート
非晶性樹脂の中でも樹脂温度が高く、乾燥もしっかり必要です。乾燥不足だとシルバーや強度低下の原因になります。PC・ABS・PPで樹脂温度が高すぎたときの糸引きは、私が現場で何度も経験している症状で、先端温度・サックバックの調整をこの3樹脂では特に意識しています。
6. POM
ポリアセタール
グレードごとに定められた上限温度を超えると、分解ガス(ホルムアルデヒドなど)が発生するリスクがあるとされ、温度管理は他の樹脂よりシビアに行う必要があります。私の場合、POMの板物でソリに苦労し、相手部品と嵌合できなかった経験があります。冷却時間を30秒から60秒に延長することで解消しました(サイクルは伸びましたが、良品確保を優先しました)。結晶性樹脂は特に、成形直後は問題なくても後収縮で翌日反ることがあるので注意しています。
7. PA6
ナイロン6
吸湿しやすいため、乾燥管理が特に重要な樹脂です。メーカー・グレードによって推奨条件は異なりますが、乾燥不足は強度不足やシルバーなどの原因になるため、成形前の水分管理を意識する必要があります。

※温度・時間の数値は樹脂グレードやメーカーによって異なります。断定的な基準ではなく、あくまで私の現場での目安として読んでください。

一般的によく使われる3樹脂(参考知識)

ここから紹介する3樹脂は、私自身が直接成形を担当した経験があるわけではなく、業界で広く知られている特性・目安条件をまとめたものです。
実際に扱う際は、必ずメーカーのデータシートを確認してください。

樹脂名 特徴(一般知識)
8. PMMA
アクリル
非晶性樹脂で、透明性の高さが最大の特徴とされています。透明樹脂特有の性質として、ヒケやウェルドラインが外観に目立ちやすいと言われています。
9. PBT 結晶性のエンプラで、耐熱性・耐薬品性に優れるとされています。加水分解しやすい性質があるため、乾燥条件が特に重要とされています。ガラス繊維強化グレードが使われることも多い樹脂です。
10. PPS スーパーエンプラに分類される結晶性樹脂で、樹脂温度・乾燥温度ともにかなり高温域とされています。金型温度も、他の樹脂より高めに設定されることが多いようです。

※この3樹脂は一般的な参考情報です。
実際の成形条件は必ずメーカーのデータシート・グレード仕様に従ってください。

まとめ|樹脂を知ることが条件出しの土台になる

  • 結晶性樹脂:PP・PE・POM・PA6・PBT・PPS(後収縮や反りに注意)
  • 非晶性樹脂:PS・ABS・PC・PMMA(透明樹脂は外観不良が目立ちやすい)
  • 乾燥が特に重要:ABS・PA6・PC・PBT・PPS(乾燥不足が強度不足や外観不良に直結)

樹脂ごとの性格を知っておくと、成形条件を勝手に触らず「なぜこの温度なのか」を考えられるようになります。
結晶性・非晶性の違いについて、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違い|収縮率への影響

樹脂温度の決め方そのものをもう少し深く知りたい方は、こちらもどうぞ。

射出成形の樹脂温度|決め方と不良対策

新人が最初に身につけるべき基本動作については、前回の記事にまとめています。

射出成形オペレーターが最初に覚える10項目

樹脂を覚えたら、次は不良の原因を絞り込もう

樹脂の種類や性質を覚えると、成形条件を考えるときの土台になります。

ただ、実際の現場では「シルバーが出た」「糸引きが止まらない」「ウェルドラインが目立つ」といった不良に直面することもあります。

そんなときは、やみくもに条件を変更するのではなく、まず「どこに」「どんな症状が出ているか」を確認して、原因を絞り込むことが重要です。

射出成形でよくある不良を症状別に確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

【1級技能士が解説】射出成形 不良対策まとめ|症状から原因を絞り込む完全ガイド

コメント

タイトルとURLをコピーしました