本記事の数値・手順はあくまで参考値です。
実際の作業では金型メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。
内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。
成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。
1級技能士のゆーじです。
型開きした瞬間、製品の表面に蛇行した筋や折り畳んだような模様が出ている。
フローマークとも違う、独特の「くねった跡」。
これがジェッティングです。
結論から言います。
ジェッティングは初速を落とすだけで大概は解決します。
残りの1割がゲート径の話です。 この順番を知っているだけで現場での対処が変わります。
ジェッティングとは何か|なぜ蛇行した模様が出るのか
本来、ゲートから射出された樹脂はキャビティ内で扇状に広がりながら充填されます。
この流れが正常な状態です。
ジェッティングはこの扇状の広がりが起きず、樹脂がゲートから糸を引くように飛び出してキャビティ内を蛇行します。
先に射出された樹脂が固化し始めた後に後続の樹脂が充填されるため、蛇行した跡が製品表面の模様として残ります。
フローマークとの見分け方
| 不良 | 見た目 | 発生箇所 |
|---|---|---|
| ジェッティング | 蛇行・折り畳んだような筋 | ゲート対面・キャビティ内部 |
| フローマーク | 波紋状・年輪状の模様 | ゲート周辺に集中 |
ジェッティングは「くねった跡」、フローマークは「波紋」と覚えてください。
フローマーク対策との関係については→ 【1級技能士が解説】射出成形 フローマーク対策|ゲート周辺の縞をなくす原因と改善手順
ジェッティングが出る3つの原因|この優先順位で疑う
原因を優先順位つきで整理します。
この順番で確認・対処することが再発防止の基本です。
原因①(最多):初速が速すぎる
最も多いケースです。
射出開始直後の速度が高すぎると、ゲート通過時に樹脂が扇状に広がらず飛び出します。
ゲートタイプや樹脂種に依存するケースもありますが、初速が主な原因であることがほとんどです。
まず初速を疑ってください。
原因②:ゲートタイプの問題
ゲートタイプによってジェッティングの出やすさと対策の塩梅が変わります。
現場の体感としてサイドゲートが最も出やすい。
ピンゲートでも発生しますが、対策の方向性が異なります。
詳しくは次のセクションで解説します。
原因③:ゲート径が小さすぎる
ゲート径が小さいほど通過時のせん断速度が上がりジェッティングが出やすくなります。
ただしゲート径の変更は金型改造が必要なため、条件側の対処を使い切ってから検討する最終手段です。
射出成形 ジェッティング対策|サイドゲートとピンゲートで初速の落とし幅が変わる
ジェッティング対策の基本は「初速を落とす」ですが、ゲートタイプによって「どこまで落とせるか」の限界が変わります。
ここを理解していないと対策が裏目に出ます。
サイドゲートの場合
サイドゲートはジェッティングが最も出やすいゲートタイプです。
製品に入る直前でゲート径を絞る構造になっているため、せん断速度が急激に上がり樹脂が扇状に広がる前にキャビティへ飛び出します。
対策として初速を極端に落とすことが有効です。
同時に金型温度を上げて流動性を補うことで、フローマークの発生を防げます。
サイドゲートは型温での補正が効きやすいため、この組み合わせで大概は解決します。
ピンゲートの場合
ピンゲートでもジェッティングは発生します。
原因はサイドゲートと同じく初速が主なケースがほとんどです。
私自身、ABSのピンゲート製品でジェッティングが出たとき、サイドゲートと同じ感覚で初速を極端に落としたところ今度はフローマークが出てしまいました。
型温を上げても改善しきれず、結局「消える最低限まで落とす」という微調整に切り替えてようやく安定しました。
ただしピンゲートはサイドゲートほど初速を落としてはいけません。
落としすぎるとフローマークが出やすく、さらに金型温度での補正も効きづらいという特性があります。
サイドゲートと同じ感覚で対処すると、ジェッティングは消えてもフローマークが残る状態になります。
ピンゲートの場合は「極端に落とす」のではなく、「ジェッティングが消える最低限まで落とす」という感覚で調整してください。
理屈はサイドゲートと同じですが、許容できる速度の幅が狭いため、より繊細な調整が必要です。
| ゲートタイプ | 出やすさ | 初速の落とし幅 | 型温補正の効き |
|---|---|---|---|
| サイドゲート | 最も出やすい | 極端に落とせる | 効きやすい |
| ピンゲート | 出る | 落としすぎ注意 | 効きづらい |
実体験|PCで多段射出を使って解決した話
私がジェッティングで一番苦労したのはPC(ポリカーボネート)の製品です。
PCは粘度が高く、ゲート通過時に樹脂の挙動が不安定になりやすい。
サイドゲートの製品でジェッティングが出続け、通常の速度調整では消えなかった。
そこで使ったのが多段射出でゲートを通過する瞬間だけ極端に速度を落とすという方法です。
【やったこと】
ゲートに樹脂が入る瞬間のポジションだけ速度を極端に落としました。
機械のスケール値で5〜3、場合によってはさらに下げます。
通過した後は通常の充填速度に戻す。
同時に金型温度を上げて流動性を補いました。
速度を落とすと樹脂の流れが悪くなるため、型温を上げることで流動性を維持します。
この2点の組み合わせで解決しました。
速度の数値(5〜3)は成形機のスケール値です
機械によって単位・スケールが異なるため、あくまで「極端に遅くする」という方向性の参考にしてください。
対策の手順|この順番でやれば大概解決する
ジェッティング対策はこの順番で進めてください。 大概はSTEP2までで解決します。
STEP1:初速を極端に落とす
ゲートを通過する瞬間のポジションを多段射出で切り出し、その区間だけ速度を極端に落とします。「少し落とす」ではなく「極端に落とす」がポイントです。
ただしピンゲートの場合は落としすぎに注意してください。
STEP2:金型温度を上げて流動性を補う
初速を落とすと充填速度が下がり、樹脂の流れが悪くなる場合があります。
金型温度を上げることで流動性を補い、充填不足・フローマークの発生を防ぎます。
サイドゲートはこの補正が効きやすい。
ピンゲートは効きづらいため調整幅に注意が必要です。
初速を落としてフローマークが出た場合は速度を戻さないこと。
金型温度で補う方向で対処してください。速度を戻すとジェッティングが再発します。
STEP3:それでも出るならゲート径変更を検討する
STEP1・2を正しく実施してもジェッティングが消えない場合は、ゲート径の変更を検討します。
ゲート径を広げることでせん断速度が下がり、樹脂が扇状に広がりやすくなります。
ただし金型改造が必要なため、設計側へのフィードバックになります。
多段射出の設計手順については→ 【1級技能士が解説】射出成形 多段射出|速度を刻みすぎると制御不能になる理由
ジェッティング対策チェックリスト
□ジェッティングかフローマークか見た目で確認した(蛇行した跡かどうか)
□ゲートタイプを確認した(サイドゲートかピンゲートか)
□初速のポジションを多段射出で切り出した
□サイドゲート:ゲートを通過する瞬間だけ極端に速度を落とした
□ピンゲート:落としすぎず「消える最低限」で調整した
□フローマークが出た場合、速度を戻さず金型温度で補った
□STEP1・2で解決しない場合、ゲート径変更を設計側に相談した
シルバーとジェッティングの複合原因については→ 射出成形シルバー対策|なぜ消えない?原因チェックリストと完封術
よくある疑問(FAQ)
Q. サイドゲート以外でもジェッティングは出ますか?
出ます。
ピンゲートなど他のゲートタイプでも初速が速すぎれば発生します。
ただし対策の塩梅がサイドゲートと異なるため、同じ感覚で対処すると裏目に出ます。
ゲートタイプを確認してから調整幅を決めてください。
Q. 初速を落とすと充填不足になりませんか?
落とすのはゲート通過の瞬間だけです。
通過後は通常の充填速度に戻してください。
金型温度を上げることで通過時の流動性低下も補えます。
充填不足が出る場合は通過後の速度設定を見直してください。
Q. ゲート径を変えるとどう変わりますか?
ゲート径を広げるとゲート通過時のせん断速度が下がり、樹脂が扇状に広がりやすくなります。
ただし広げすぎるとゲートの固化が遅くなり、サイクルタイムや保圧への影響が出ます。
金型メーカーと相談の上で変更してください。
まとめ
- ジェッティングの正体はゲート通過時に樹脂が扇状に広がらず蛇行する現象。
- 原因の優先順位は初速→ゲートタイプ→ゲート径。
- サイドゲートが出やすいのはゲートで径を絞る構造のため。
- サイドゲートは極端に初速を落として金型温度で補う。型温補正が効きやすい。
- ピンゲートは落としすぎ注意。型温補正も効きづらいため繊細な調整が必要。
- それでも出るならゲート径変更を設計側に相談する。
初速を落として金型温度で補う。
ゲートタイプによって塩梅が変わることを知っているだけで、ジェッティングへの対処が変わります。
おすすめ記事
【1級技能士が解説】射出成形 不良対策まとめ|症状から原因を絞り込む完全ガイド
【1級技能士が解説】射出成形 フローマーク対策|ゲート周辺の縞をなくす原因と改善手順
【1級技能士が解説】射出成形 多段射出|速度を刻みすぎると制御不能になる理由
X(旧Twitter)でも情報を発信中‼


コメント