【1級技能士が解説】射出成形 黒点の原因と対策|パージ材とスクリュー掃除の使い分け

射出成形の黒点対策|パージ材とスクリュー掃除の使い分けを解説する1級技能士の警告画像 射出成形

本記事の数値・手順はあくまで参考値です。
実際の作業ではパージ材メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。
内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。

成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。

1級技能士のゆーじです。

こんな経験はありませんか?
色物の生産が終わり、次は透明製品の立ち上げ。
数ショット打ったら製品の中に黒い点が混入している。
あるいは昼休みに成形機を高温のまま放置してしまい、再起動後から黒点が止まらない。

黒点が出るたびにロスが積み上がっていく。
焦れば焦るほど原因が分からなくなる。

結論から言います。
黒点はパージ材で9割解決します。
残りの1割がスクリュー掃除の出番です。
順番を間違えなければ怖くありません。

射出成形の黒点とは何か|原因は3点セットとスクリューの焼け付き

黒点の正体はシリンダー内で炭化した樹脂です。
樹脂は高温にさらされ続けると分解が始まります。
分解した樹脂がシリンダー内の滞留箇所に蓄積し、さらに熱を受け続けることで炭化します。
この炭化物が成形中に剥がれて製品に混入したものが黒点です。

黒点が発生しやすい箇所

特に固着が起きやすいのが3点セットと呼ばれる部分です。

部品名 役割 固着のリスク
逆止リング 樹脂の逆流防止 隙間に樹脂が入り込みやすい
スクリューヘッド 樹脂をシリンダー前方へ押し出す 先端部に滞留が起きやすい
チェックリング 計量時の樹脂逆流を防ぐ 開閉動作の隙間に固着しやすい

スクリュー本体のフライト(螺旋状の溝)にも樹脂が固着することがあります。
特にスクリュー表面に形成されたスキン層——固化した樹脂の薄い膜——への蓄積が黒点の原因になります。

黒点が出やすい状況|色替え後と長時間放置が2大トリガー

トリガー①:色物→透明製品の切り替え後

色の付いた樹脂から透明樹脂に切り替えるとき、シリンダー内に残った着色樹脂の残渣が黒点として現れやすくなります。
透明製品は黒点が目立ちます。
わずかな異物でも検査で弾かれるため、色替え後の立ち上げは特に慎重なパージが必要です。

トリガー②:高温で長時間放置した後

昼休み・段取り替え・トラブル対応などで成形機を高温のまま長時間放置すると、シリンダー内の樹脂が熱分解を起こします。

高温放置は黒点の最大のトリガーです。30分以上停止するときは温度を下げるか、事前にパージしてシリンダー内を空にしておくことを推奨します。

パージ材で解決する|アサクリンEX→SLの2段階パージ手順

黒点が出たらまずパージ材で対処します。
私が現場で使っているのはアサクリンのEXとSL(株式会社松村石油研究所製)の2種類です。

EX→SLの2段階パージという考え方

この2つは役割が違います。

  • アサクリンEX:シリンダー内の固着・炭化物を剥がし落とす
  • アサクリンSL:EXで剥がした汚れを洗い流す

EXで汚れを浮かせてからSLで押し出すイメージです。
EXだけで終わらせると、剥がれた汚れとEX自体がシリンダー内に残ります。
必ず2段階でセットで使ってください。

パージ前の準備

  1. アサクリンEXを使用する前に、シリンダー温度を260〜300℃に設定します。温度が低いとパージ材の洗浄効果が十分に発揮されません。
    ※EXのメーカー適用可能範囲は200〜300℃ですが、私の体感では260〜300℃を推奨します。色が濃いほど温度高めがおすすめです。
  2. 背圧をほぼMAXに設定する
    EXを投入する前に背圧をほぼ最大まで上げます。
    背圧を高くすることでスクリューが樹脂を強くこね混ぜ、固着物への物理的な力が増します。
  3. スクリュー回転数を超低速に設定する
    メーカーは高速回転(200rpm前後)を推奨しています。
    ですが、私の現場感覚では超低速回転(5~10rpm)の方が効果が高い。理由はスクリュー表面のスキン層への作用の違いです。
    高速回転だとパージ材がスキン層の表面をなぞるだけになり、固着物を削り取る力が弱い。
    超低速回転ならパージ材がスキン層に食い込みながらゆっくり削り取っていくイメージになります。
    時間に余裕があるときは超低速、急いでいるときはメーカー推奨の高速という使い分けも現実的です。

EXパージの実施

  1. アサクリンEXを投入して流し出し
    EXをホッパーから投入し、流し出し(スクリューを回転させたまま樹脂を前方に送り出す)を繰り返します。
    シリンダー内の固着物が剥がれてEXと一緒に出てくるのを確認します。
  2. SLに切り替えて洗い流す
    EXをノズルから絞り切ってからSLに切り替えます。
    SLがノズルから出てきたら、通常のパージ操作に切り替えて押し出します。
    EXで剥がした汚れをSLが押し出して完了です。
  3. 次に使用する樹脂または粉砕材で再パージ
    パージ完了後、次に使用する樹脂または粉砕材でパージを行います。

  4. 試し打ちで黒点がないか確認する
    パージ完了後に試しショットを数発打ち、製品に黒点が混入していないかを確認します。
    透明製品の場合は特に入念に確認してください。超低速回転でのパージは時間がかかりますが、スクリュー表面のスキン層を削り取る効果が高い。
    時間に余裕があるときは超低速を選んでください。

パージで取れないときはスクリュー掃除

パージ材を正しく使っても黒点が止まらない場合は、スクリューを抜いて直接掃除する段階に入ります。

パージ材を使っても製品を打ったときに黒点が出続ける——これがスクリュー掃除に踏み切るタイミングです。

パージで改善が見られない場合、シリンダー内やスクリュー表面に固着物が蓄積しすぎていて、パージ材の洗浄力では届かない状態になっています。
この段階ではスクリューを抜いて直接固着物を除去するしかありません。

スクリュー掃除の注意点

  • スクリューは高温になっているため、取り扱いには耐熱手袋を使用する(火傷注意‼)
  • 固着物の除去には真鍮製のブラシを使用する(スクリュー表面に傷をつけないため)
  • スクリューを再装着する際は、スレッド部分に焼き付き防止剤を塗布する
  • 作業は必ず設備担当・機械メーカーの指示に従って行うこと

黒点を出さないための予防策

長時間停止前にパージする習慣

昼休みや段取り替えで30分以上停止する時は、事前にパージしてシリンダー内を空にしておきます。
樹脂が高温にさらされる時間を最小限にすることが予防の基本です。

色替え時の段取りを丁寧にする

色物から透明製品への切り替えは特に入念なパージが必要です。
「もういいだろう」と思ってからさらに数ショット打つ余裕が、黒点ロスを防ぎます。

温度管理を徹底する

樹脂温度が高すぎる状態が続くと分解・炭化が加速します。
成形条件の温度設定を定期的に確認し、必要以上に高温にしないことが長期的な予防になります。

黒点対策チェックリスト

□黒点が出始めたタイミングを確認した|色替え後か・長時間放置後か

□シリンダー温度を260〜300℃に上げた

□ 背圧をほぼMAXに設定した

□スクリュー回転数を超低速に設定した(時間に余裕がある場合)

□アサクリンEXでドローリングして固着物を剥がした

□EXを完全に絞り切ったことを確認してからSLに切り替えた

□試し打ちで黒点がないことを確認した

□パージ後も黒点が出る場合はスクリュー掃除を検討した

よくある疑問(FAQ)

Q. アサクリンEXとSLはどちらを先に使いますか?

必ずEXが先です。
EXで固着・炭化物を剥がし落としてから、SLで洗い流す順番です。
SLから始めると固着物が残ったままになります。

Q. パージは何ショットくらい打てばいいですか?

EXがノズルから出てくるまで流し出し(スクリューを回転させたまま樹脂を前方に送り出す)をします。
出始めたらSLに切り替え、SLが安定して出てくるまで継続します。
ショット数で決めるより「何が出てきているか」で判断する方が確実です。

Q. スクリューを抜かずに黒点が消えたか見極める方法は?

透明樹脂か白色樹脂で試し打ちして確認するのが一番確実です。
透明製品であればそのまま製品で確認できます。
黒点が混入していなければパージ完了と判断してください。

まとめ

  • 黒点の原因は3点セットとスクリューへの樹脂固着・炭化
  • 2大トリガーは色替え後と高温長時間放置。停止前のパージが最大の予防。
  • パージはEX→SLの2段階。EXで剥がしてSLで洗い流す。
  • 温度は260〜300℃・背圧はほぼMAX・回転数は超低速(5~10rpm)が現場の実感。
  • パージで黒点が消えない場合はスクリュー掃除に踏み切る。

黒点はパージで9割解決します。順番を守って落ち着いて対処してください。

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