⚠️免責事項
⚠️ 本記事の数値・手順はあくまで参考値です。実際の作業では金型メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください
成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。
1級技能士のゆーじです。
今回のテーマはウェルドラインです。
結論から言うと、対策の順番は「速度・圧力 → 型温・ノズル温 → 型修正の相談」。
ウェルドの状態を見て一手ずつ動かすのが最短ルートです。
「バリが出たらV-P切換を疑え」「ヒケが出たら保圧を見直せ」——現場にはそういった定石がいくつかありますが、ウェルドラインはそう一筋縄にはいきません。
速度を上げれば改善することもあれば、逆にガス焼けを招くこともある。対策の引き出しが多い分、判断を誤ると別のトラブルを引き起こします。
この記事では「ウェルドが出たとき、現場で何をどの順番に試すか」を、14年の経験をもとに整理しました。
ウェルドの状態でわかること|まず現物を見る
対策に入る前に、ウェルドの状態を確認してください。状態によって最初の打ち手が変わります。
| ウェルドの状態 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 線が薄く、触るとわずかにわかる程度 | 合流点の温度低下・速度不足 |
| 線が濃く、くっきり見える | 合流点温度の大幅な低下・ガス滞留 |
| シルバーや気泡を伴っている | ガス焼け・分解ガス・過剰な速度または圧力 |
| 毎回同じ場所に出る | ゲート位置・樹脂流動に起因(型的な問題) |
ウェルドラインはなぜ起きるか
合流点で何が起きているか
射出成形では、樹脂はゲートから流れてキャビティを充填します。
キャビティの形状によっては、流れが分かれて再び合流する箇所ができます。
この合流点がウェルドラインの発生場所です。
問題は、合流してきた樹脂の表面温度です。
樹脂はキャビティを流れる間に型壁と接触して冷却され、表面にスキン層(固化した薄い層)を形成します。
このスキン層が合流点で十分に溶け合わないと、融合不完全な界面——つまりウェルドラインとして残ります。
せん断発熱(樹脂が流れる際に摩擦で発生する熱)が十分であれば合流点の温度は維持されますが、流動距離が長い・型温が低い・射出速度が遅いといった条件が重なると合流点温度が下がり、ウェルドが濃くなります。
ウェルドが発生しやすいのは次のような状況です。
- 多点ゲート:複数のゲートから充填した樹脂が合流する
- 穴・インサートの周囲:樹脂が障害物を回り込んで合流する
- 肉厚が急変する部分:薄肉部を通った樹脂が厚肉部で減速し、合流点温度が下がる
特に穴あき形状やインサート(金属部品をキャビティ内に置いて樹脂で包む成形)がある場合、型の設計段階でウェルド位置がほぼ決まっています。
この場合、条件調整で「消す」ことは難しく、「目立たなくする」ことが現実的な目標になります。
ウェルドラインは「外観不良」だけじゃない
外観部品ではもちろん見た目の問題になりますが、注意が必要なのは強度部品です。
ウェルドラインの合流点は、分子レベルでの結合が不完全な状態になっています。
そのため、引張や曲げの応力がかかったときに、ウェルド部が破断の起点になりやすい。
特にガラス繊維入り樹脂では、ガラス繊維がウェルド部で配向不良を起こし、強度低下が顕著になります。
外観だけで判断せず、「その部品に荷重がかかるかどうか」を確認する習慣をつけておきましょう。
現場でできる対策①|速度と圧力から入る
基本の考え方
ウェルドが出たとき、私はまず速度と圧力を見ます。
型温やノズル温を動かすと立ち上がり直しに近いコストがかかりますが、速度・圧力は波形を見ながらリアルタイムで調整できるからです。
ただし、ウェルドの状態によって打ち手が逆になることに注意してください。
ウェルドが濃い・線がくっきりしている場合
→ 射出速度を上げる方向から入ります。
合流点に届くまでの樹脂温度を下げないために、充填時間を短くするイメージです。
速く送り込むことでせん断発熱も増え、合流点の温度が上がります。
ただし、ここに落とし穴があります。
私が実際にやらかした経験ですが、ウェルドを消そうと速度を上げ続けた結果、ウェルドが出ていた部分にガス焼けが発生しました。
ウェルドが出る箇所はガスが溜まりやすい場所でもあります。速度を上げすぎると、そのガスを巻き込んで焼けに転じるのです。
速度を上げるときは必ず少しずつ、波形を確認しながら行ってください。
シルバーや気泡を伴っている場合
→ 速度より先に圧力を下げることから入ります。
シルバーや気泡が出ているということは、すでにガスや分解ガスが発生している状態です。
この状態で速度を上げるとさらに悪化します。
まず圧力を落として樹脂への負荷を減らし、状態を見てから速度を判断してください。
波形確認を忘れない
速度・圧力を調整するとき、波形で「圧力に対して速度がちゃんと出ているか」を必ず確認してください。
設定上は速度を上げているのに実際の波形で速度が出ていない場合、原因は別にあります。
例えばノズル詰まり・樹脂の粘度上昇・背圧の影響などが考えられます。
波形を見ずに設定値だけ動かしていると、原因を見誤ります。
具体的に確認したいのは次の2点です。
① 充填ピーク圧力とスクリュー速度の波形が安定しているか ショットごとにバラついている場合、樹脂の計量状態や逆流防止リングの摩耗を疑います。
ウェルドの出方がショットごとに変わるなら、まずここを確認してください。
② V-P切換点での速度の落ち方が急すぎないか 充填末端やウェルド発生箇所によっては、V-P切換のタイミングが合流点への充填に影響します。
切換が早すぎると合流直前で速度が落ち、ウェルドが濃くなることがあります。
V-P切換の設定についてはこちらの記事を参考にしてください。
現場でできる対策②|型温・ノズル温を上げる
速度・圧力を調整しても改善しない場合は、温度に手を入れます。
型温を上げる
型温を上げると、キャビティ内での樹脂の冷却速度が遅くなります。
結果として合流点に届いたときの樹脂温度が高く保たれ、スキン層の融合が促進されます。
型温調整はジャンプアップではなく、5℃刻みで上げながら成形品を確認するのが基本です。
上げすぎるとサイクルタイムが延びる・ヒケが出る・離型不良が起きるといった別の問題が出てきます。
型温を上げる効果が出るまでには、型が熱的に安定するまでの時間が必要です。
変更後すぐに判断せず、10〜20ショット程度流してから成形品を確認する習慣をつけてください。
型温が安定していない状態でさらに温度を上げると、オーバーシュートして別のトラブルを招きます。
ノズル温を上げる
ノズル温を上げると樹脂の流動性が上がり、充填末端や合流点まで温度が届きやすくなります。
ただし、熱に敏感な樹脂(POMやPVCなど)では分解のリスクがあるため、上げ幅には注意が必要です。
それでも残るなら型修正の話をする
速度・圧力・温度を試しても改善しないウェルドは、流動パターン自体に起因していることがほとんどです。
ここから先は現場オペレーターの判断範囲を超え、型屋・設計との相談が必要になります。
現場での対策の限界を感じるタイミングとして、私は次の状態を目安にしています。
- 型温・ノズル温を上げても、ウェルドの濃さが変わらない
- 速度を上げるとガス焼けになり、下げるとウェルドが濃くなる(身動きが取れない状態)
- 毎ショット同じ場所・同じ濃さで安定して出ている
この状態になったら、早めに型屋・設計に相談することをおすすめします。
自分で試せる手を全部試してから相談する必要はありません。
「条件で対応できる範囲を超えている」と判断できた時点で共有するのが、ロスを最小化する動き方です。
ベントを追加してもらう
ウェルドが発生する合流点には、ガスが溜まっています。
このガスが逃げられない構造になっていると、いくら条件を調整してもウェルドは残ります。
型屋にベント(ガス逃がしの溝)を合流点付近に追加してもらうことで、ガスの滞留を解消できる場合があります。
入れゴマを検討する
ベントを追加してもガスが抜けない場合、入れゴマ(型の一部を交換可能な入れ子構造にすること)でガスを逃がす方法もあります。
ただし、これは型の設計上・構造上、入れゴマを設置できる場合に限ります。
型によっては対応できないこともあるため、必ず型屋・設計担当に確認してください。
判断フローのまとめ
チェックリスト|ウェルドライン対策
- [ ] ウェルドの状態を確認した(薄い・濃い・シルバーや気泡の有無)
- [ ] 波形で速度・圧力の実測値を確認した
- [ ] シルバー・気泡がある場合は圧力を下げた
- [ ] 射出速度は少しずつ上げ、ガス焼けへの転換を確認しながら調整した
- [ ] 型温・ノズル温の調整は5℃刻みで行った
- [ ] その部品が強度部品かどうかを確認した
- [ ] 改善しない場合は型屋・設計に相談した
よくある質問
Q. ウェルドラインとフローマークの見分け方がわかりません。
A. ウェルドラインは2本以上の樹脂流が合流した場所に1本の線として現れます。
フローマークはゲート周辺から同心円状・縞状に広がる模様です。
発生メカニズムが違うため、対策も変わります。
見た目だけで判断しにくいときは、樹脂の流動シミュレーション(充填解析)と照らし合わせるか、ゲートからの距離で判断するとよいです。
フローマーク対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Q. 毎回同じ場所にウェルドが出ます。条件を変えても消えません。
A. 毎回同じ場所に出るウェルドは、ゲート位置や流動パターンに起因している可能性が高いです。
この場合、成形条件の調整で完全に消すのは難しく、ゲート位置変更・型修正が根本対策になります。
現場でできる範囲は「目立たなくする」ことになるため、型屋・設計との相談を早めに行うことをおすすめします。
補足として、外観的に問題ない場所にウェルドを「逃がす」という設計的な対策もあります。
ゲート位置を変えることで合流点を意図的に移動させる方法で、外観基準が厳しい部品では設計段階から検討されることがあります。
現場で「なぜここにウェルドが出るのか」を説明できるようにしておくと、設計・型屋との話し合いがスムーズになります。
Q. ガラス繊維入り樹脂でウェルドが特に目立ちます。なぜですか?
A. ガラス繊維入り樹脂では、合流点でガラス繊維が流れに沿って配向します。
その結果、ウェルド部の見た目が線状にはっきり出やすく、かつ強度低下も起きやすい。
型温を高めに設定して合流時の樹脂温度を上げることが有効ですが、限界があります。
強度が要求される部品では、ウェルド部の位置自体を設計段階で検討することが望ましいです。
まとめ
ウェルドライン対策のポイントを振り返ります。
- ウェルドの状態(シルバー・気泡の有無)を見て、最初の打ち手を判断する
- 速度を上げるときは波形を確認しながら少しずつ。上げすぎはガス焼けに転じる
- 速度・圧力で改善しなければ、型温・ノズル温を5℃刻みで調整する
- それでも残るウェルドは型的な問題。型屋・設計との相談が必要
ウェルドラインは「原因が一つじゃない」トラブルです。現物の状態をよく見て、一手ずつ根拠を持って動かしていくことが、結果への一番の近道です。
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