📋 この記事でわかること。
- 射出成形の油染みが発生する2大原因(エジェクタピンのグリス・コマのさび止め)
- モノタロウ金型洗浄剤を使った正しい清掃手順
- エジェクタピンを「出し切る」清掃が正解な理由
- フッ素セパレートを使った潤滑の手順と注意点
- 成形品への油染み転写を成形中に発見したときの初動
成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。1級技能士のゆーじです。
突き出しピンまわりの油が成形品に転写されて、後工程から「また油染みが出てる」と言われた経験はありませんか。
あるいは、生産再開の最初の数十ショットだけ妙に油っぽい外観不良が出て、しばらくすると収まる——そんな現象に悩んでいませんか。
この記事はそのお悩みを丸ごと解決するために書きました。
射出成形の油染みには原因が2種類あります。エジェクタピンに塗ったグリスが流れ出るケースと、コマに塗ったさび止めが生産再開時に熱で溶け出すケース。
原因が違えば対策も違う。
この記事を読み終えたとき、あなたは「油染みが出たらまず何を疑うか」が明確にわかるようになります。
射出成形で油染みが出る原因|エジェクタピンのグリスとコマのさび止めを疑え
油染み対策の第一歩は、「どこから来た油か」を特定することです。
原因を間違えると、いくら清掃しても再発が止まりません。
原因① エジェクタピンのグリス
エジェクタピンは金型の中を上下に摺動するため、焼き付き防止のグリスが必要です。
しかし成形中の熱でグリスが軟化・流動し、ピンの先端やコア面に滲み出てくることがあります。
このグリスが製品の突き出し面に付着すると、黒ずんだ指紋のような油染みとして転写されます。
以下の2点が揃えばエジェクタピンのグリスが犯人です。
- 型開きのたびに同じ位置に油染みが出る
- 突き出しピンの配置と油染みの位置が一致する
エジェクタピンからの油漏れが繰り返す場合は、グリスの管理だけでなく構造的な原因がある可能性があります。
原因② コマのさび止め
コマとはスライドや入れ子など、金型の可動部品を指します。
生産終了時には錆び防止のため、さび止め(防錆剤)を塗布して保管します。
問題は、この防錆剤を完全に拭き取らずに生産を再開したとき。
金型が昇温するにつれて防錆剤が熱で流動し、成形品に転写されます。
「生産最初のロットだけ油染みが出て、途中から収まった」という現象はほぼこれです。熱で蒸発・焼失するまでの数十ショットが不良になるため、立ち上げ時のロス率を上げる厄介な問題です。
正しい清掃の「前提」|なぜ綿手に洗浄剤を吹くのか
金型洗浄剤は、金型に直接吹き付けてはいけません。 洗浄剤を金型面にスプレーすると、油分と溶剤が混ざって広範囲に広がります。PLやコア面に薄く油膜が伸び、かえって油染みの範囲を拡大させます。
正しい方法はシンプルです。
✅ 綿手に洗浄剤を吹き付けてから、金型を拭く。
綿手の繊維が洗浄剤を含み、拭いた場所の油分を物理的に吸い取ります。液が不要な箇所に広がらないため、狙ったポイントだけをピンポイントで清掃できます。
使い古した綿手が最適な理由:繊維が馴染んでいてベントの溝や細かい形状にフィットしやすいからです。
使用する洗浄剤はモノタロウで入手できる市販の金型洗浄剤で十分です。成分的に特殊なものは必要ありません。
金型の清掃が行き届いていないと、油染みだけでなくガス焼けやベント詰まりにも直結します。→ ガス焼け・型温管理の罠|0.02mmベントが死ぬ本当の理由
エジェクタピンの油染み清掃|「出し切る」ことが正解の理由
🔑 突き出しピンを出し切れるまで全ストローク前進させた状態で清掃する。 これが唯一の正解です。
ピンを途中まで出した状態で清掃しても、ピンの摺動部分(金型プレートの中を貫通している部分)についたグリスは拭けません。
ピンを元の位置に戻した瞬間、清掃していない部分のグリスがコア面に引き出され、次のショットでまた転写されます。
いくら拭いても再発するのはこのためです。
エジェクタピン清掃の手順
- 型開き状態でエジェクタピンを全ストローク前進させる 成形機の突き出し操作で、ピンが止まるところまで前進。途中で止めない。
- 綿手に洗浄剤を吹き付ける 綿手全体に均一に吹き付け、湿った状態にします。びしょびしょにならない程度——繊維が洗浄剤を含んだ状態が目安。
- ピンの軸全体を綿手でなぞる 前進したピン1本ずつ、軸を包むように綿手でなぞります。黒いグリスが綿手に移れば正常に清掃できています。ピンの先端面とコア面上のピン周辺も忘れずに。
- 乾いた綿手で仕上げ拭き 洗浄剤の残渣を拭き取ります。溶剤が残ったまま成形すると、蒸発ガスが別の不良を引き起こす場合があります。
- フッ素セパレートで潤滑する 清掃でグリスを拭き取ったままではピンが焼き付くリスクがあります。フッ素セパレートを綿手に吹き付け、ピンの軸全体に薄く均一に塗布します。
フッ素セパレートの正しい使い方|薄く・均一に・拭き取りまでが1セット
フッ素セパレートはエジェクタピンの焼き付き防止と離型補助に使う潤滑剤ですが、使い方を間違えると油染み不良の原因になります。
製品の目安: モノタロウで「フッ素系離型剤」「フッ素セパレート」と検索すると複数ヒットします。スプレータイプで速乾性のあるものが現場では使いやすい。洗浄剤と同じくモノタロウで継続購入できるものを選ぶと管理が楽です。
最も多いミスは以下の2つです。
| よくあるミス | 何が起きるか |
|---|---|
| 金型に直接スプレーする | 液が流れ、型面に薄膜として付着し転写される |
| 塗りすぎる | 余剰分が成形中の熱で流動し、製品面に転写される |
🔑 正しい使い方:綿手に吹き付け → ピンに薄く塗布 → 乾いた綿手で余分を拭き取る
「塗ったら終わり」ではなく、「余分を拭き取るところまでが潤滑の工程」です。
塗布後の確認方法: 清掃した綿手でピン表面を軽くなぞり、黒い汚れが出なければ清掃完了・余分な油分もなし、と判断できます。
コマのさび止めによる油染み対策|生産再開前の「拭き取り確認」を工程に組み込む
コマのさび止めによる油染みの対策は、清掃よりも生産再開前の準備にあります。
防錆剤を完全に拭き取らずに型締めしてしまうことが問題の根本です。
生産再開前の確認手順
- 型開き状態でコマ全体を目視確認する 防錆剤特有の油っぽい光沢・黄みがかった膜がないか確認します。
- 洗浄剤を吹き付けた綿手でコマ面を拭く スライド面・コア面・PLとの合わせ面を重点的に拭きます。綿手が黄〜茶色に染まれば防錆剤が取れているサインです。
- 乾いた綿手で仕上げ拭き 洗浄剤の残渣を完全に拭き取ります。
- 型締めして試しショット前に再確認 型開き後、コア面を再度綿手でなぞります。引っかかりや油っぽさがなければ生産開始の判断をしてください。
この確認を定期点検の作業手順書に組み込んでおくと、担当者が変わっても同じ品質で再開できます。
定期点検と不良発生時の「清掃タイミング」の考え方
定期点検時(予防清掃)
不良が出ていなくても、エジェクタピンとコマの清掃を定期的に行うことで油染み不良の発生そのものを防ぎます。
清掃記録を残しておくと、「何ショット周期で油染みが発生しがちか」という傾向が見えてきます。
その周期より短い間隔で清掃することが予防の基本です。
不良発生時(対応清掃)
成形中に油染みを発見したときは、まず発生箇所を記録します。
「位置の特定」を飛ばして闇雲に清掃すると、原因箇所を見落としたまま再発します。
| 発生箇所 | 疑うべき原因 |
|---|---|
| 突き出し面(エジェクタピン跡のある側) | エジェクタピンのグリスが第一容疑 |
| コア面全体的な油っぽさ | コマのさび止めを疑う |
油染みと同時にシルバーや光沢ムラが出ている場合は、複合原因を疑ってください。→ 射出成形シルバー対策|なぜ消えない?原因チェックリストと完封術
よくある疑問(FAQ)
Q. エジェクタピンを出し切った状態で清掃するのは、成形機のプログラムを変えないとできませんか?
ほとんどの成形機では手動操作(マニュアルモード)で突き出し前進が単独操作できます。
機械によっては全前進の位置が設定値で決まっているため、設定ストロークまで前進させれば十分です。
メーカーや機種によって操作が異なるため、設備担当か機械マニュアルで確認してください。
Q. フッ素セパレートの代わりに普通の離型剤でも大丈夫ですか?
離型剤はコア面・キャビ面への使用を前提にした製品です。
エジェクタピンの摺動部分への潤滑はフッ素系の専用品が適しています。
成形品への転写リスクと焼き付き防止効果の両立という観点で、エジェクタピンにはフッ素セパレートが現場での標準的な選択です。
Q. 洗浄剤で拭いてもグリスが固着して取れない場合はどうすればいいですか?
まず綿手を新しいものに替えて再度清掃してください。
同じ綿手を使い続けると、吸い取ったグリスを再塗布してしまいます。
それでも改善しない場合は、設備担当または金型メーカーに相談することを推奨します。
摺動部の固着は構造的な問題や寸法精度に関わるリスクがあるため、現場判断での研磨作業は避けてください。
Q. さび止めを塗らずに金型を保管してもいいですか?
短期間(数日以内)の保管であれば問題ないケースもありますが、長期保管や湿度の高い環境では錆が発生するリスクがあります。
生産再開前の拭き取り確認を徹底する前提で、金型メーカーの推奨保管方法に従ってください。
まとめ:油染みは「原因の特定」と「手順の正確さ」で防げる
射出成形の油染み不良は、やみくもに清掃を繰り返しても解決しません。
- 清掃の基本は「綿手に洗浄剤を吹き付けてから拭く」
- エジェクタピンは「出し切ってから清掃してフッ素セパレートで潤滑」
- コマは「生産再開前の拭き取り確認を工程に組み込む」
この3点を現場の標準手順にするだけで、油染みクレームは確実に減ります。
指先の感触と金型の状態を読む習慣が、あなたを条件屋から本物の成形技術者へと変えます。


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