【1級技能士が解説】射出成形 V-P切換の設定方法|失敗しない調整手順と3大悪手

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⚠️ 本記事の数値・手順はあくまで参考値です。実際の作業では金型メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。


成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。1級技能士のゆーじです。

V-P切換の設定、なんとなくでやっていませんか?

「とりあえず前の条件のままにしている」「バリが出たから少し早めた」——そういう根拠のない調整を繰り返していると、いつか必ずオーバーパックか未充填でやられます。

この記事では、V-P切換の基本的な考え方から、設定の手順、よくある失敗パターンまでを現場目線で解説します。

📋 この記事でわかること

  • V-P切換が「早すぎる・遅すぎる」と何が起きるか
  • 10mmスタートと30mmスタート、使い分けの判断基準
  • 機械サイズ別の刻み幅(30〜150トン・150〜400トン)
  • 自動成形中の桁ミスを防ぐ方法
  • 変更後に2ショット見るべき理由

V-P切換のトラブル診断|その不良、切換タイミングが原因かもしれない

まずこの表で、今出ている不良がV-P切換に関係しているか確認してください。

症状 疑うべきV-P切換の状態
✅ ヒケが出ている 切換が早すぎる→充填不足で保圧が効かない
✅ バリが出ている 切換が遅すぎる→オーバーパックになっている
✅ フローマークが出ている 切換が早すぎる→充填後期の流れが失速
✅ 立ち上げのたびに条件がズレる mm管理ではなく%管理になっていないか確認
✅ 量産中に突然バリやヒケが出た 樹脂ロット差・型温変化でV-P切換位置がズレた可能性

当てはまる症状があれば、この記事の対応箇所を確認してください。


1. V-P切換とは何か|速度制御から圧力制御に切り替える理由

V-P切換とは、射出工程における速度制御(Velocity)から保圧制御(Pressure)への切り替えタイミングのことです。

射出成形の充填工程はざっくり2段階に分かれます。

工程 制御 目的
充填(射出) 速度制御 樹脂を金型に素早く流し込む
保圧 圧力制御 収縮分を補い、形状を安定させる

この2つの切り替えポイントがV-P切換です。

切り替えが早すぎると:充填が足りず、ヒケやショートの原因になります。

切り替えが遅すぎると:充填しすぎ(オーバーパック)でバリや型傷の原因になります。

V-P切換は「樹脂をどこで止めるか」の判断です。これを感覚で決めると、条件が安定しません。


2. 基本の設定方法|まず10mm前後から始める理由

V-P切換の設定値は、スクリュー位置(mm)で管理するのが一般的です。

初めて型を立ち上げるとき、どこから始めるか。

基本は10mm前後からスタートです。理由はシンプルで、オーバーパックを防ぐためです。

V-P切換を遅く(数値を小さく)設定するほど、キャビティに入る樹脂量は増えます。最初から攻めた設定で入ると、型が開いた瞬間にバリだらけ——あるいは最悪の場合、型傷になります。

手順

  1. V-P切換を10mm前後に設定する
  2. 1ショット打って製品を取り出す
  3. 充填状態を確認する(ショートしているか、ちょうどか)
  4. 切換位置を調整する(刻み幅は下記を目安に)
    • 30〜150トン機(小〜中型製品):2〜5mm単位
    • 150〜400トン機(大型製品):5〜10mm単位で充填ラインを探し、近づいたら2mmに切り替える
  5. 変更後は必ず2ショット見てから判断する

2ショット見る理由は後述しますが、1ショット目は樹脂の熱履歴が安定していないため、正確な評価ができません。


3. 30mmから始めるパターン|樹脂量を増やしながら切り替えを探す方法

基本は10mm前後ですが、もうひとつのアプローチがあります。

V-P切換を30mm程度の早い位置から始めて、徐々に遅らせていく方法です。

製品が大きかったり、肉厚が厚い製品で充填量の見当がつきにくいときに有効です。

手順

  1. V-P切換を30mm前後に設定する(この時点では確実にショートする)
  2. 1ショット打って充填状態を確認する
  3. 刻み幅を目安に切換位置を遅らせていく(数値を小さくする)
  4. 充填が完了するラインを探す
  5. そこから微調整で「ヒケなし・バリなし」のポイントを決める

このアプローチのメリットはオーバーパックのリスクなく、安全に充填ラインを探せることです。

最初から10mm前後で始めると、型によってはいきなりバリが出ることがあります。特に肉薄製品や流動性の高い樹脂(PP・MFRの高いABSなど)では、30mmスタートの方が安全です。

どちらのアプローチを選ぶかは、製品サイズ・樹脂・型の経験値によって判断してください。

ヒケが消えない場合は保圧との組み合わせも確認してください。→ 射出成形 ヒケの原因と対策

4. やってはいけない3大悪手

❌ 悪手① 一気に切換位置を変える

「もっとバリを消したい」と思ったとき、V-P切換を一気に早めたくなります。しかしこれは危険です。

V-P切換を一気に早めると、充填途中で保圧に切り替わります。この瞬間に圧力が急上昇してオーバーパックになるリスクがあります。オーバーパックは型傷・PLへのダメージに直結します。

変更幅は機械サイズを目安にしてください。30〜150トン機は2〜5mm単位、150〜400トン機は5〜10mm単位が原則です。急いでいるときほど慎重に。


❌ 悪手② 自動成形中の変更で桁ミスをする

自動成形が回っているとき、V-P切換の数値を変更することがあります。このとき絶対に気をつけなければいけないのが桁ミスです。

「10」を入力するつもりで「100」と打ってしまった。これが自動成形中に起きると、次のショットで一気にオーバーパックします。現場でこの事故は珍しくありません。

自動成形中に条件を変更するときは、変更後の数値を声に出して確認してから確定する癖をつけてください。特に数値が大きく変わる変更のときは、一度成形を止めてから変更する方が安全です。


❌ 悪手③ 変更後に1ショットで判断する

V-P切換を変更した直後の1ショット目は、正確な評価ができません。

理由はスクリュー内の樹脂の熱履歴が安定していないためです。1ショット目は前の条件の樹脂が残っており、見た目は良品でも2ショット目から変化が出るケースがあります。

変更後は必ず2ショット確認してから判断してください。「1ショット見て良かったから次の型替えに入った」——こういう判断が後工程の不良を生みます。


5. V-P切換と不良の関係

V-P切換のズレは、さまざまな不良と連動しています。

症状 V-P切換との関係
ヒケ 切換が早すぎて充填不足→保圧が効かない
バリ 切換が遅すぎてオーバーパック
フローマーク 切換が早すぎて充填後期の流れが失速
ウェルド悪化 切換タイミングのズレで合流部の圧力が不足

特にフローマークとV-P切換の関係は見落とされやすいです。充填後期に速度制御から保圧制御に切り替わると、流速が一気に落ちます。このタイミングがスキン層の形成に影響し、フローマークの原因になることがあります。

フローマーク対策の詳細はこちら

またV-P切換が遅すぎてオーバーパックになると、バリとヒケが同時に出る「内圧の暴走」状態になることがあります。

バリ・ヒケ・ショートが同時発生する原因はこちら


6. V-P切換チェックリスト【保存版】

立ち上げ時

  • V-P切換は10mm前後(または30mm)からスタートしたか
  • 刻み幅は機械サイズに合わせているか(30〜150トン:2〜5mm/150〜400トン:5〜10mm)
  • 変更後に2ショット確認したか

自動成形中の変更時

  • 変更後の数値を声に出して確認したか
  • 桁ミスがないか確認したか
  • 大きな変更の場合、一度成形を止めてから変更したか

不良が出たとき

  • ヒケ→切換が早すぎないか確認したか
  • バリ→切換が遅すぎないか確認したか
  • フローマーク→切換タイミングと充填後期の流速を確認したか

FAQ|よくある3つの質問

Q. V-P切換の単位はmmとショット%、どちらが良いですか?

スクリュー位置(mm)での管理を推奨します。%表示は機械によって基準が異なるため、型替えや機械替えのときに混乱しやすいです。mmで管理しておくと、別機種に移したときの再現性が上がります。

Q. V-P切換を変えてもバリが消えません。他に何を確認すべきですか?

型締力・バリの発生箇所・樹脂温度を確認してください。V-P切換でバリが消えない場合、充填圧力そのものが高すぎるか、型締力が不足している可能性があります。V-P切換だけで追いかけず、圧力全体のバランスを見直してください。

Q. 量産中にV-P切換がズレることはありますか?

あります。スクリューの摩耗・樹脂のロット差・型温の変化によって、同じ設定でも実際の充填量が変わります。量産中に突然バリやヒケが出たとき、V-P切換位置が実態に合わなくなっている可能性を疑ってください。


V-P切換は「勘で決めるもの」ではありません。

基本の手順を守り、機械サイズに合った刻み幅で動かし、2ショット確認する。

この3つを徹底するだけで、立ち上げの失敗は激減します。

切換位置を1mm動かす根拠を、今日から持ってください。


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