【1級技能士が解説】射出成形 型締力の計算と機械選定|バリが止まらない理由

射出成形の型締力と機械選定の考え方|バリが止まらない原因と判断基準を解説 射出成形
感覚と計算の両方で判断する型締力の基本

⚠️ 本記事の数値・手順はあくまで参考値です。実際の作業では金型メーカー指定値・社内規定を必ず最優先にしてください。内容の適用による損害について、当サイトは責任を負いかねます。


成形現場で働く皆さん、今日もお疲れ様です。1級技能士のゆーじです。

型替えのとき、こんな判断をしていませんか。

「前にやったあの型と似たサイズだから、同じ機械で行けるだろう」

実はこの判断、間違っていません。経験を積んだオペレーターほど、計算より先に感覚で機械を選べるようになります。

ただし、その感覚を裏付ける根拠を持てているかどうかが、条件屋と本物の成形技術者の分岐点です。

この記事では、型締力の計算式の基本から、現場での機械選定の判断フロー、バリが止まらないときに型締力を疑うタイミングまでを解説します。


型締力のトラブル診断|その不良、型締力が原因かもしれない

まずこの表で、今出ている不良が型締力に関係しているか確認してください。

症状 疑うべき原因
✅ 保圧を下げてもバリが止まらない 型締力不足の可能性
✅ 樹脂温を下げてもバリが止まらない 型締力不足または型故障
✅ 型替え後に突然バリが出る 機械サイズと型のミスマッチ
✅ 取り出し機がうまく入らない タイバー間距離・デーライトの確認不足
✅ 同じ型を別の機械に移したらバリが出た 機械ごとの型締力の差

当てはまる症状があれば、この記事の対応箇所を確認してください。


1. 型締力とは何か|なぜバリと直結するのか

型締力とは、射出成形機が金型を締め付ける力のことです。単位はトン(tf)で表し、「200トン機」「450トン機」という呼び方はこの型締力の大きさを示しています。

射出成形では溶融樹脂を高圧で金型に流し込みます。このとき金型の内部には強い圧力がかかり、型を押し開こうとする力が生まれます。

型締力がこの力に負けると、PL面(金型の合わせ面)が開いて樹脂が漏れ出します。これがバリです。

つまり型締力は「キャビティ内圧に負けないための最低限の力」です。

型締力不足は、型が大きく開く現象ではありません。実際には数μmレベルでPL面が開き、その隙間に樹脂が流れ込むことでバリが発生します。

バリとヒケが同時に出る「内圧の暴走」についてはこちら


2. 型締力の計算式|投影面積×キャビティ内圧×余力

必要型締力は以下の計算式で求められます。

必要型締力(tf)= 投影面積(cm²)× キャビティ内圧(kgf/cm²)÷ 1000 × 余力

投影面積とは

射出方向から見た製品の面積です。製品の平面サイズ(タテ×ヨコ)で計算します。複数個取りの場合はランナーも含めた面積で計算します。

キャビティ内圧の目安

樹脂によって異なります。

樹脂 キャビティ内圧の目安
PP 300〜350 kgf/cm²
ABS 400〜500 kgf/cm²
PC 500〜600 kgf/cm²

流動性が高い樹脂ほど圧力が低く、流動性が低い樹脂ほど高くなります。

流動抵抗が大きいほど、キャビティ内圧は高くなる

余力は1.2〜1.3倍

安全率として1.2〜1.3倍の余力を見ておくのが一般的です。

計算通りにいかないケースが現場では多いためです。

計算例

PP製トレイ(500mm×300mm)の場合

  • 投影面積:50×30=1,500 cm²
  • 必要型締力:1,500×300÷1,000×1.3=585 tf
  • 選定機械:650トン機

ABS製筐体(300mm×200mm)の場合

  • 投影面積:30×20=600 cm²
  • 必要型締力:600×450÷1,000×1.3=351 tf
  • 選定機械:400トン機

PC製部品(200mm×150mm)の場合

  • 投影面積:20×15=300 cm²
  • 必要型締力:300×550÷1,000×1.3=214 tf
  • 選定機械:250トン機

3. 現場での機械選定の判断フロー|型厚とタイバー間距離を先に確認する

計算式は機械選定の参考値です。現場では計算と同時に、以下の2点を必ず確認してください。

① 型厚とデーライトの確認

デーライトとは、型開き時の可動盤と固定盤の最大間隔です。

金型は深さのある製品ほど厚くなります。型厚がデーライトを超えると物理的に型が入りません。また型厚が機械の最小型厚を下回る場合も取り付けできません。

確認式:成形品の深さ < デーライト-型厚

実際にこんな経験がありました。

「行けると思った3枚プレートの型をいざ機械に乗せてみたら、製品は手では取り出せる。しかし取り出し機のアームが入るスペースがなかった。」

計算では問題なかったのに、 デーライトと取り出し機のアーム幅を考慮していなかったための失敗です。

機械選定では型締力の計算だけでなく、実際に型を乗せたときの作業空間まで確認することが必要です。

② タイバー間距離の確認

タイバーとは型締め機構を支える4本の柱です。金型はこのタイバーの内側に収まる必要があります。

計算上の型締力が問題なくても、タイバー間距離を超える金型は物理的に入りません。

③ ショット重量の確認

製品重量が機械の射出容量の60%以内に収まっているか確認してください。

スクリューは先端に向かって順に樹脂を溶融するため、100%すべてを射出することはできません。射出容量の60%以内で成形することが量産安定の目安です。

これを超えると計量バラつきが大きくなり、充填量が安定しません。


4. バリが止まらないとき型締力を疑うタイミング

バリの原因は型締力だけではありません。保圧・樹脂温・V-P切換のズレでもバリは出ます。

型締力を疑うのは、条件調整で改善しない場合です。

判断の手順はこうです。

  1. 保圧を下げる→バリが改善しない
  2. 樹脂温を下げる→バリが改善しない
  3. V-P切換を早める→バリが改善しない

この3つを試してもバリが止まらない場合、型締力不足または型の傷を疑います。

型の傷との見分け方は発生箇所です。型締力不足のバリはPL面全体または広範囲に出ます。型の傷によるバリは特定の箇所に集中します。

V-P切換の調整方法はこちら


5. 機械選定チェックリスト【保存版】

型替え前の確認
以下を満たしていれば、機械選定で失敗する確率は大きく下がります。

  • 必要型締力を計算したか(投影面積×キャビティ内圧×余力1.2〜1.3)
  • 型厚が機械のデーライト・最小型厚の範囲内か
  • タイバー間距離に型が収まるか
  • 取り出し機のアームが入るスペースがあるか
  • ショット重量が機械の射出容量の60%以内か

バリが止まらないとき

  • 保圧を下げて改善したか
  • 樹脂温を下げて改善したか
  • V-P切換を早めて改善したか
  • 上記すべてで改善しない場合→型締力不足または型の故障を疑う

FAQ|よくある3つの質問

Q. 型締力が足りているかどうかは数値でわかりますか?

成形機によっては型締力モニターで実際にかかっている型締力を確認できます。設定値に対して実際の型締力が大きく下回っている場合、機械の劣化や調整不良の可能性があります。モニターがない場合は条件調整でバリが改善しないことが判断の基準になります。

Q. 同じ型を小さい機械で打つことはできますか?

計算上の必要型締力を満たしていれば可能なケースもあります。ただし余力が少なくなるため、樹脂ロット差や型温の変化でバリが出やすくなります。量産での安定性を優先するなら推奨しません。

Q. 中古機械を使う場合の注意点はありますか?

型締力は経年劣化で低下することがあります。カタログ値と実際の型締力に差が出ているケースがあるため、中古機械への型替えでバリが増えた場合は実測値の確認をメーカーに依頼することを推奨します。


型締力の計算式を知ることと、現場で正しく判断できることは別の話です。

「前にやった型と似ているから行けるだろう」という感覚は間違っていません。ただその感覚の裏に、型厚・タイバー間距離・余力の根拠を持てることが、本物の成形技術者の条件です。


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